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しんりしけん

心理試験

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,728 字 · 46 页

青空文庫

三人の間には、斎藤の噂を始めとして、色々の話題が話された。すっかり安心した蕗屋は、中でも一番雄弁な話手だった。

そうしている内に、いつの間にか時間が経って、窓の外に夕暗が迫って来た。蕗屋はふとそれに気附くと、帰り支度を始めながら云った。

「では、もう失礼しますが、別に御用はないでしょうか」

「オオ、すっかり忘れて了うところだった」明智が快活に云った。「なあに、どうでもいい様なことですがね。丁度序だから、……御承知かどうですか、あの殺人のあった部屋に、二枚折りの金屏風が立ててあったのですが、それに一寸傷がついていたと云って問題になっているのですよ。というのは、その屏風は婆さんのものではなく、貸金の抵当に預ってあった品で、持主の方では、殺人の際についた傷に相違ないから弁償しろというし、婆さんの甥は、これが又婆さんに似たけちん坊でね、元からあった傷かも知れないといって、却々応じないのです。実際つまらない問題で、閉口してるんです。尤もその屏風は可也値うちのある品物らしいのですけれど。ところで、あなたはよくあの家へ出入りされたのですから、その屏風も多分御存じでしょうが、以前に傷があったかどうか、ひょっと御記憶じゃないでしょうか。