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しんれいのいだくきんかい
心霊の抱く金塊
大倉 燁子
「東京朝日新聞」1935(昭和10)年9月23~24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,344 字 · 5 页
(上)
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ツイ二三日前のこと、私達は赤い丸卓子を囲んで昂奮に汗ばんだ顔を並べ、心霊学者深井博士の話を、熱心に聞いていた。もう秋だというのに恐ろしく蒸し暑い晩だ。
「金塊はたしかにあった。この眼で見てきたのだから間違いはない、価格はまず五億万円ほどだ」
と云って、口を真一文字にきゅッと結び、皆を見廻した。隣席にいた人は、その時、思わず低い呻きのような歎声をもらした。
× × ×
五億万円ばかりの金塊が、ある洞窟の奥に隠されている、と、一人の優れた霊媒が云い出したのは、よほど前のことである。ナヒモフ号やリュウリック号を聯想して、私達はそれを一笑に付して顧みもしなかったのであるが、博士は何か信ずるところがあったと見えて、その後、研究に研究を重ねた結果、登山客の杜絶えたこの秋の初めに自ら探検に出かけて、遂に実証を見届けて来たという、その驚くべき報告を、今宵集まった人達に話そうとするのである。
「場所はどこですか」「その金塊には全く所有者がないのですか」「発見者は全部貰えるのですか、それとも何割という規定でもあるのでしょうか」などと、慾深い連中からの質問が続出する。