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しんれいのいだくきんかい
心霊の抱く金塊
大倉 燁子
「東京朝日新聞」1935(昭和10)年9月23~24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,344 字 · 5 页
話が終っても、皆は云い合せたように黙っている。私の頭の中は一瞬間、金塊、洞窟、人霊、発狂などが、くるくると廻っていた。その金塊が博士の手に取り出されるあるとき、というのは一体いつのことであろう? 永久に来ないときなのではあるまいか、しかし、博士の顔に希望が輝き、何事をか期していられるもののようであった。
× × ×
私は日本アルプスの洞窟にさまよう心地で外へ出た。忽ち、電車、円タク、街の騒音に現実の世界へ放り出された。すると、聞いたばかりの話さえも、あとかたのない一つの遠い物語の如くにも思われるのだが、五億万円という言葉だけはどうも忘れられない。
またサッと降り出した雨に、アスファルトが金塊ででもあるように光っていた。