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しんれいさつじんじけん

心霊殺人事件

坂口 安吾

「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页

青空文庫

後閑仙七の名をきいて、なるほど、それなら話がわかると九太夫は思った。しかし、奇妙な兄妹たちだなと内心におどろいたのである。何より変ってるのは四人の兄妹の顔立が全然ちがっていることだ。姉の勝美は瓜実顔の美人であるが、次女のミドリは丸顔の美人で、目にも鼻にも共通点がない。勝美はオチョボ口でうけ唇だが、ミドリは大口で時々カラカラ笑っている。末のファッションモデルの糸子は先年熱海でミス何々の選があったとき九太夫も見物にでかけて知ってるのだが、これはまたチンのようなクシャ/\した顔で、しかし、妙に色ッぽくて愛くるしい娘なのである。ミス何々の三等ぐらいだったようだ。一寸法師の辰男は西郷隆盛がシカメッツラしているような大きな顔で、首から足までは顔の倍ぐらいしかない。お客のトランクを地面すれすれにブラ下げて歩いてるが、バカ力があるらしく両手に大トランクをいくつもブラ下げて疲れた顔もせずに歩いているのである。

だいたい他人に対して血も涙もない人間というものは親子の情に限ってすこぶるこまやかなのが一般の例だ。自分の血のツナガリだけが自分の城、安住の地というわけかも知れない。