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しんれいさつじんじけん

心霊殺人事件

坂口 安吾

「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页

青空文庫

ところが後閑仙七は例外で、巨億の富を握りながら一寸法師の倅に宿屋の客ひき番頭をさせているのだ。

次女のミドリは岸井という旅館の倅にお嫁入りしているが、先年の熱海の大火で類焼した。そのとき復興の資金を借りにミドリの舅が泣きついたとき、金貸しが商売だからお貸しはするが新築の建物をタンポに利息はこれこれと営業通りの高利を要求して一分一厘もまける様子がないのでケンカ別れとなった始末だ。勝美もミドリも類の少い美人であるから婚家に当り前に暮していられるが、さもなければ肩身がせまくて婚家に居づらいに相違ない。親類のツキアイなぞというものを仙七は生来知らない様子であった。冷血ぶりもここまでくればと仙七の人物を大いに認める者もあるほどだった。

この仙七が人々に評判をたしかめた上、日本一と名の高い吉田八十松という術師を大和の国からよぶことになった。心霊術には大道具が必要であるから、それをはるばる大和から運ばせて、滞在費謝礼等二万ナニガシの金がかかる。高利がついて戻る金でなければビタ一文出したことのない仙七がビルマからアイノコの孫をよぶため息子の霊をよぶためと称して二万ナニガシのムダをする。