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しんれいさつじんじけん

心霊殺人事件

坂口 安吾

「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页

青空文庫

そのお告げを後廻しにしたというのは、もうその一件が役割を果してしまったからですよ。後閑サンは至極ノンビリしてしまって、実験会のたのしみの方を先にした始末ですが、そこに容易ならぬ大敵が生れていたことを知らずにいたのですね」

「八十松がなぜ父を殺したんですか」

辰男が熱心にきいた。

「それはね。吉田八十松は品性下劣な人物なんだね。彼は後閑サンに凄い見幕で怒られて荷物をまきあげられてから、いろいろ考えてみたのだろう。自分が送った荷物でないのは確かだし宅送という方法からみても自宅の者が送った荷物とも思われない。また自宅の者が送る理由もないのだね。すると確かにあの荷物は後閑氏のものだ。しかも後閑氏は自分の名で送らずに、吉田八十松から吉田八十松宛に送っている。そこには深いシサイがあるはずだ。悪智恵のはたらく奴だからおおよその見当はついたんだね。すくなくとも本人の名では送れない何物かだ。心霊術師は人に怪しまれずに大道具を発送できるから、そこを狙ってのカラクリだ。その内容は天下に高名な高利貸しの秘密の荷物であるから素姓のよからぬもので高価なものに相違ない。かくも苦心して送り届けている以上、よほど重大な何かが詰めこまれているに相違ない。