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かいそう

快走

岡本 かの子

「令女界」1938(昭和13)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,273 字 · 11 页

青空文庫

母親は早速立って行って手紙を持って来たが

「道子宛ての手紙だけですよ。お友達からですがねえ、この頃の道子の様子では手紙まで気になります。これを一つ中を調べて見ましょうか」

「そうだね、上手に開けられたらね」

父親も賛成の顔付きだった。母親は長火鉢にかかった鉄瓶の湯気の上に封じ目をかざした。

「すっかり濡れてしまいましたけれど、どうやら開きました」

母親は四つに折った書簡箋をそっと抜き出して拡げた。

「声を出して読みなさい」

父親は表情を緊張さした。

勇ましいおたより、学生時代に帰った思いがしました。毎晩パンツ姿も凜々しく月光を浴びて多摩川の堤防の上を疾駆するあなたを考えただけでも胸が躍ります。一度出かけて見たいと思います。それに引きかえこの頃の私はどうでしょう。風邪ばかり引いて、とてもそんな元気が出ません……

「へえ、そりゃほんとうかい」

父親はいつもの慎重な態度も忘れて、頓狂な声を出してしまった。

「まあ、あの娘が、何ていう乱暴なことをしてるんでしょう。呼び寄せて叱ってやりましょうか」

母親は手紙を持ったまま少し厳しい目付きで立上りかけた。

「まあ待ちなさい。