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かいそう

快走

岡本 かの子

「令女界」1938(昭和13)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,273 字 · 11 页

青空文庫

あれとしてはこの寒い冬の晩に、人の目のないところでランニングをするなんて、よくよく屈托したからなんだろう。俺だって毎日遅くまで会社の年末整理に忙殺されてると、何か突飛なことがしたくなるからね。それより俺は、娘の友達が言ってるように、自分の娘が月光の中で走るところを見たくなったよ…………俺の分身がね、そんなところで走ってるのをね」

「まあ、あんたまで変に好奇心を持ってしまって。でも万一のことでもあったらどうします」

「そこだよ、場合によったら弟の準二を連れて行かせたら」

「そりゃ準二が可哀そうですわ」

「兎も角、明日月夜だったら道子の様子を見に行く」

「呆れた方ね、そいじゃ私も一緒に行きますわ」

「お前もか」

二人は真剣な顔をつき合せて言い合っていたが、急に可笑しくなって、ははははははと笑い出してしまった。二人は明日の月夜が待たれた。

道子には友達からの手紙は手渡されなかったし、両親の相談なぞ知るよしもなかった。ただいつも晩飯前に帰らない父親が今日は早目に帰って来て自分等の食卓に加わったのが気になった。今晩お湯に行きたいなぞといえば母親が一緒に行くと言うかも知れぬ。