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しそうどういんろん
思想動員論
戸坂 潤
「日本評論」日本評論社、1937(昭和12)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,012 字 · 18 页
之と同時にこうした思想統制は、国民に対する呪文的恐喝に近づいて来たので、国民のとがった感情を刺激することは出来ても、国民を動員するに足るだけの政治的同類感を催すためには、この上なく不都合なものとなって了ったのである。思想「統制」の最高段階に立ちながら、その思想統制を遺憾なく漫画化した点に於て、林内閣は思想政策上、特筆に値いするものであったろう。
そこでこの思想統制の「独善」振りに方向転換を与えたものは、近衛現内閣なのである。近衛内閣の思想政策上の功績は、従来の内閣の独善的思想統制の伝統を思い切って振りすてて、思想統制に著しい動員性を与えたことにあるのだ。この内閣の一種の好評は正にこれに類する聡明さにあるのであって、日本型ファシズムの推進のためには絶対に不可欠な合法的仮面と近代的民衆常識の利用とを心得ていたことがその強みであろう。果して北支事変が発生するや否や、政府は財界・政界・並びに言論界、の代表者を集めて、之に経済的、政治的、社会的、及び思想的(文化言論)・「挙国一致」を要求し、喜んで夫に協力するという言質を取って了ったのである。例えば政党の首領が議会外に於て政府当局に一定の政治的誓約を与えるということは何を意味するか。