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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

と威嚇して立ち去ったのであった。一藩が震駭し、数十人の捕り手を繰り出し、逃げ込み先の猿ヶ京の温泉をおっとり囲んだのは当然といえよう。

権は今廊下を走って行く。と、行く手に四、五人の捕り方が現われた。権は素早く廊下添いの部屋の襖を開けて飛び込んだ。

「それ」

と捕り方たちは走って来た。襖をあけて覗くと、若い女が俯伏しに寝て、両袖で顔をかくしていた。

「女だ」

「恐いことはないぞ。アッハッハ」

と、捕り方たちは走り去った。権はしばらくじっとしていたが、やがて起き上がると廊下へ出、主屋の方へ小走り出した。廊下が丁字形になっている所へ来た。左へ曲がったとたん、二人の捕り方にぶつかった。顔を見られた。

懺悔の妻

「曲者!」

と一人の捕り方が正面から組付いて来た。

「わッ」

と捕り方は悲鳴をあげて仆れた。脇腹から血が流れ出ている。

「汝!」

ともう一人の捕り方が横から躍りかかった。権の匕首が捕り方の咽喉へ飛んだ。権は、仆れてノタウチ廻る捕り方を見すてて走った。

「お頭アーッ」

と呼ぶ声がした。行く手の降り口から、囲炉裡側で、片耳のない武士の話をしていた絹商人が、顔を出していた。