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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

「いんね、そうじゃごぜえません。噂で聞けばお前さんの所へ化物が出るということで。ひとつ俺らがその化物を退治してやろうと思いましてね」

「ああさようでございますか。それはどうも大変ご親切に」手代はおかしさを堪えながら、

「失礼ながらご身分は?」

「信州木曽の猟師でごわす」

「え、猟師でございますって?」

「ああ俺ら猟師だよ。一丁の弓で猪猿熊を射て取るのが商売でね。姓名の儀は多右衛門でごわす」

「へいさようでございますか。どうぞしばらくお待ちくだすって」

手代は奥へ飛んで行ったが引き違いに出て来たのは柏屋の主人の弥右衛門という老人であった。

弥右衛門は多右衛門の様子を見て思う事でもあると見えて丁寧に奥へ案内した。幽霊の噂が立って以来実際柏屋染め物店は一時に寂れてしまったので、たといどのような人間であろうと、その化物を見現わしてくれて、厭な噂を消してくれる人なら、喜んで接待しようというのが弥右衛門の今頃の心なのであった。

まず茶菓を出し酒肴を出し色々多右衛門をもてなした。多右衛門は別に辞退もせずさりとて卑しく諂いもせず平気で飲みもし食いもしたがやがてゴロリと横になった。