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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

それにもかかわらず不思議なことには、訳のわからぬ不安の気が、旗二郎の心に感じられた。「よし」と突然どうしたのか、旗二郎は呟くと立ち上がった。取り上げたのは大小である。「どっちみち怪しい屋敷らしい。思い切って様子を探ってみよう。一室に籠もって酒を飲んで、事件の起こって来るやつを、待っているのは消極的だ。こっちからあべこべに出かけて行き、屋敷の秘密を探ってやろう」

で、部屋から出て行ったが、はたして結城旗二郎、どんな怪異にぶつかったろう?

七

いつか旗二郎裏庭へ出た。

素晴らしく宏大な庭である。山の中へでもはいったようだ。

木立がか黒く繁っている。築山が高く盛り上がっている。広い泉水がたたえられてある。いたる所に花木がある。泉水には石橋がかかっている。

ずっと遙かの前方で、月光を刎ねているものがある。風にそよいでいる大竹藪だ。その奥に燈火がともっている。神の祠でもあるらしい。燈明の火がともっているらしい。

地面は苔でおおわれている。で、気味悪く足がすべる。

一所に小滝が落ちている。それに反射して月光が、水銀のようにチラチラする。

と、ほととぎすのなき声がした。