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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

そこで物音を立てぬよう、彼らに姿を見せぬよう、背後下がりに退いた。数間来た所でクルリと振り向き、抜き身を袖で蔽ったが、腰をかがめると木蔭づたい、母屋の方へ小走った。

築山裾まで来た時である。

「ご苦労でござった、結城氏」

こういう声が聞こえて来た。

と、すぐ別の声がした。

「我らこちらを守りましょう。願わくば貴殿、石橋を渡られ、向こうに立っている離れ座敷、それをお守りくださるよう」

とまた別の声がした。

「そちらに主人おりますのでな」

どこにいるのか解らない。どこかに隠れているのだろう。そうして悉皆を見たのだろう。

十

「ははあ、さっきの奴らだな」

結城旗二郎察したが、問答をしている時ではない、頼まれて人を切った以上、乗りかかった船だ、最後まで、手助けをしてやろうと決心した。

「承知」

と一声簡単にいったが、築山を巡ると泉水へ出、石橋を向こうへ渡り越した。

行く手に建物が立っている。廻廊で母屋とつながっている。独立をした建物である。木立がその辺を暗めている。雨戸がピッシリ閉ざされてある。

そこまでやって来た旗二郎、グルリと周囲を見廻したが、建物のはずれの一角の、暗い所へ身をひそめた。