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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

国枝史郎『怪しの館 短編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:怪しの館、一枚絵の女、犬神娘、開運の鼓、猿ヶ京片耳伝説、日置流系図、北斎と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 页

青空文庫

竹田街道の立場茶屋で、「おいどうだった?」とお綱という女に向かい、声をかけたところの男だったからです。

「何か用ですかい」とその男が云って、もう笑顔を引っ込ませ、怪訝そうに訊きかえしました。

「いいえ……ナーニ……なんでもないんですが……お見受けしましたところあのお屋敷から……」

「あの屋敷がどうかしましたかな?」

「いいえ、ナーニ、何んでもないんですが……空家だと思っておりましたところが、あなた様が潜門から出て来られたので。……それに綺麗な手が見えたりしましたので……」

「綺麗な手? なんですかそいつは?」

「千木の立ててある建物から――建物の二階の雨戸から、綺麗な上品な手が出ましたので……」

「ナニ、千木のたててある建物から、綺麗な上品の手が出たんだって」と、その男はひどく驚いたように云って、その建物を振りかえって眺めましたが、「何を馬鹿らしいそんなことが。……お前さんあそこはあらたかな所でね、ある一人の女の他は、誰だってはいれねえところなのさ。……はいったが最後天罰が……だが待てよ、そこから手が出た? とするとあの女の手なんだろうが、俺らあの女とは今しがたまで、別棟の主家で話していたんだ」