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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

「ど、どうしたんです、塩田大尉」

大尉はなにごとに気をいらだたせているのでしょうか。

「おお一彦君、ちょっとここへおいで」

大尉はこのとき、われにかえったように目をぱちぱちさせて、一彦をよびました。

「はい、な、なんですか」

「これをよんでごらん」

といって、大尉はさっきから何か書きこんでいた手帳を、一彦の方へさしだしました。

一彦がその手帳をうけとって、大尉の走書をよんでみますと、次のようなことが書いてあります。

“ああ、ああ、うるさい。わしは研究中だ。誰がきても会わんぞ。今日はだめだめ。帰ってくれ”

それから、一行おいてその次に、また書きつけてある文句がありました。それは、

“ああ、ああ、うるさい。わしは研究中だ。誰がきても会わんぞ。今日はだめだめ。帰ってくれ”

という文句です。前の文句も後の文句も全く同じことが書いてあります。

「塩田大尉は変だなあ、同じことを二度も書いてありますよ。気分でも悪いのですか」

と一彦がききますと大尉は首をふり、

「体もなにも変りはないよ。変なのは、この扉のうちで返事をした博士の言葉が、いつも同じ文句だということだ。まるでゴム判をおしたように、“ああ、ああ、うるさい”などと、同じことをいっているのだ」