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かいとうおう
怪塔王
海野 十三
「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页
太陽の光も、もうここには届かず、あたりはインキをとかしたように、まっくろで煙のような軟かい泥が、ふわりと平に続いています。さすがに海藻も生えていません。まるで眠っている沙漠とおなじことであります。
その軟泥の寝床のうえに、怪塔は横たおしになったまま、じっとしていました。ただ怪塔の窓には、内部のほの明るい電灯の光がうつり、まるで、魔物の目をあけて、あたりを睨んでいるように見えます。
さあ、怪塔の中は、一体どうなっているでしょうか。
ここは二階の機械室です。
怪塔が横になっているので、すべての機械るいは横たおしになっています。
三人の黒人が入っている三つの太い鉄の円筒もみな横むきになっていました。
帆村探偵は、どこにいるのでしょうか。
それから、問題の怪塔王は、いまなにをしているのでしょうか。
「どうだ、もういい加減に降参したがいいだろう」
どこかで聞いたような声ですが、三階の階段のかげから叫びました。階段のかげにうずくまっている一箇の人影――こっちへ顔を出したところをみればそれは例の汐ふきそっくりの怪塔王の顔でありました。彼は一体誰に、(もう降参をしろ)などとよびかけているのでしょうか。