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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

錨をさきにつけた麻縄と、彼が機体からくりだしている麻縄とが二本ならんでみえる。

「うむ、もうすこしだ! おちついて、しっかり、そして大胆に!」

小浜兵曹長は、もうたまらなくなって、伝声管を通じて、操縦士の青江三空曹に声援です。

青江三空曹は、それにはこたえなかった。操縦桿をにぎる彼は、そのとき緊張の絶頂にあったのだ。彼の目も、耳も、心も、反射鏡に映る錨と麻綱のほかに、なにも見えず、聞えず、感じなかったのです。

錨と麻綱とはだんだん近づいて来ました。

「もうすこしだ。青江、しっかりやれ」

ぴしり!

空中で錨と綱とが、はげしくつきあたった。火花がはっきりみえたと思った。あっと思った瞬間、錨はぶうんとはねとばされました。

「ちぇーっ」

6

空中の曲技!

錨のさきに、こっちの綱がうまくかかったと思った刹那に、綱は錨をぽーんとはじいてしまいました。

「しまった」

と、さけんだのは操縦の青江三空曹です。

「うむ、ざんねん」

と、呻いたのは同乗の小浜兵曹長です。

空中の曲技が、おしいところで失敗してしまいました。

「上官、やりなおしをいたします」

「うむ、おちついてやれ」