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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

2

青江三空曹の、空中の冒険がはじまりました。

綱にぶらさがって渡るのは、大得意でありましたが、なにしろ空中を猛烈なスピードでとんでいる綱をつたわるのですから、なまやさしいことではありません。ともすればひどい風の力で、体はふきとばされそうになります。

「青江、しっかりやれ」

小浜兵曹長は、偵察席の上から腕をふりあげて、青江をはげましました。

青江三空曹は、それに対して、かすかに頭をふって上官へあいさつをしました。

二メートル、三メートルと、青江の体はすこしずつ向こうへうごいていきます。

小浜兵曹長は、この勇ましい若武者のはたらきをすぐさま本隊あてに、無電で報告いたしました。

すると折りかえして本隊から、

“わが帝国海軍戦史のあたらしき一ページは、青江三空曹のこのたびの壮挙により、はなばなしくかざられたり”

と、光栄にみちた感状の無電がとどきました。

これをうけとって、小浜兵曹長は、わがことのようによろこび、

「おい青江、司令官から感状だ!」

とさけびましたが、夢中に綱をわたっている青江三空曹には、きこえた様子もないのは、ざんねんでありました。