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かいとうおう
怪塔王
海野 十三
「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页
そういう声は、たしかにこの前の怪塔王の罵り声でありました。そして本当に毒ガスがでてきたのでもありましょうか、塔の上に別の赤い灯がつきました。
「おい、一彦君。残念だが引きかえそう」
と、帆村は無念そうにいいました。
「おじさん、やっぱり退却するの」
「うん、どうも仕方がないよ。折角鍵まで用意してきたけれど、これじゃ深入りしない方が後のためになる。さあ一、二、三で駈けだそう。走るときは真直に走っちゃ駄目だよ。鋸の歯のようにときどき方向を急にかえて走るんだぜ。そうしないと、塔の上から射撃されるおそれがある」
と、帆村の注意は、どこまでも行きとどいていました。
こうして帆村と一彦とは、折角怪塔まで近づきながら、遂に怪塔王に気づかれてしまって、残念ながら引きかえすこととなりました。
二人は、この失敗にそのまま勇気をくじいてしまうでしょうか。
不思議な木箱
1
さて、その翌日の夜のことでありました。
怪塔のあたりはいつものように闇の中に沈んで、三階目の窓に黄いろい灯のついていることも、昨日のとおりでありました。
その夜も更けて、時刻はもう十二時ちかくでもありましたろうか。