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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

「どうだ一彦君、海軍のキャラメルも、なかなかおいしいだろう」

「ええ、僕、大すきだな」

二人がうまそうにキャラメルをしゃぶっているうちに、この室には、すでに変なことが起っていました。二人が円い腰掛に腰をおろしたときに、それが始ったのですが、まずそれに気がついたのは、一彦です。

「あっ、塩田大尉、変ですね。この部屋はうごいていますよ」

3

「この部屋が、うごいているって。――なるほどこいつはたしかにうごているぞ」

塩田大尉はおどろいて、椅子から立ちあがり、一彦少年の顔を見ました。

一彦は、目をくるくるまわしていました。

「ああ、この部屋はずんずん下っていく――」

「うん、なるほど下っていく」

一彦少年は、このまえ怪塔の中に帆村と忍びこんでいたとき、やはり自分のいた部屋が、床ごと下へ下っていったときのあのおどろきを、またあたらしく思いだしました。それを大尉にはなしますと、大尉は剣をひきよせたまま、うんうんとうなずいてみせました。

部屋は一体どこまで下っていくのであろうと、二人はそればかり考えています。

ごとん。

かすかに床がゆれて、うごいていた部屋はぴたりととまりました。