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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

昼間だけではありません。夜間でもはっきりうつります。テレビジョン器械は、人間の眼よりもはるかに感じがするどく、人間の眼にみえないものでも器械の力でよく壁にうつしだすのです。

怪塔王は、レンズを軍艦の方にむけ、壁に夜の海面の光景をうつしだしました。軍艦が大砲をうつと大砲の煙が出ているはずです。そう思って怪塔王が見てみましたが、一向煙もあがっていません。

「じゃあ何の音だろう」

と、怪塔王は不思議がってテレビジョンを方々へまわしてみましたが、なんの変ったこともありません。ただ塔の前に、大きな木箱が二つ落ちているばかりでした。そして積荷をおとした馬車が向こうへゆくのも見えます。

「なんだ、ばかばかしい。あの箱が落ちた音だったか。ああねむいねむい」

と、怪塔王はまた寝床にもぐりました。

3

二つの木箱がそろそろと塔の入口にむかって匍いだしたときには、怪塔王はテレビジョンを消して、もう寝床の中にはいったあとでありました。

もっと永く起きていれば、このそろそろ動く怪しい木箱が目にうつったかも知れないのです。怪塔王にとっては珍しい大失敗でした。

二つの木箱は、塔の入口にぴったりとよりそいました。