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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

煙突のようにほそ長い海底牢獄を、綱をたよりにぐんぐん上へのぼっていきますと、もうあとすぐ天井にぶつかりそうなところに、一つの横穴があいていました。

綱は、そこから下へおろされているのでありました。

「おお、ここにぬけ穴があったか」

小浜兵曹長が、その横穴をひょいと見ると、そこに命の綱を一生懸命に引張っている帆村荘六の姿が、電灯の光に照らされて見えました。

「おお帆村君か。君は無事だったのか」

と、うれしさ一杯で、思わず兵曹長がさけびましたところ、帆村は、

(しーっ。黙っていてください)

と、眼と身ぶりでしらせました。

どうやら帆村は、小浜兵曹長すくいだしの途中で、怪塔王に気どられることを、たいへんおそれているようでありました。

小浜兵曹長にも、すぐそれがわかりましたので、あとは黙々として綱をたぐり、帆村のいる横穴へ匐いこみました。

「帆村君、助けてくれてありがとう」

と、兵曹長が思わず帆村の方へ手をさしだせば、帆村もそれをぐっと握りかえし、

「いいえ、たいしたことではありません。それより僕は、思いがけなく、小浜さんを迎えることができて、どんなにかうれしいんです」