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かいむ
怪夢
夢野 久作
「文学時代」1931(昭和6)年10月、「探偵クラブ」1932(昭和7)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,100 字 · 23 页
私は夢中になった。イキナリ立ち上って檻の中から両手を突き出した。相手の白い診察着の襟を掴んでコヅキ廻した。
「……サ……ここから出せ……出してくれ……この檻の中から……そうして一緒に研究を完成しようじゃないか……ね……ね……後生だから……」
私は思わず熱い涙に咽せんだ。その塩辛い幾流れかを咽喉の奥へ流し込んだ。
けれども診察着の私は抵抗もしなければ、逃げもしなかった。そうして患者服の私に小突かれながら苦しそうに云った。
「……ダ……メ……ダ……お前は俺の……大切な研究材料だ……ここを出す事は出来ない」
「ナ……ナ……何だと……」
「お前を……ここから出しちゃ……実験にならない……」
私は思わず手をゆるめた。その代りに相手の顔を、自分の鼻の先に引き付けて、穴の明く程覗き込んだ。
「……何だと! モウ一ペン云って見ろ」
「何遍云ったっておんなじ事だよ。俺はお前をこの檻の中に封じ籠めて、完全に発狂させなければならないのだ。その経過報告が俺の学位論文になるんだ。国家社会のために有益な……」
「……エエッ……勝手に……しやがれ……」
と云いも終らぬうちに私は、相手のモシャモシャした頭の毛を引っ掴んだ。