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かいむ

怪夢

夢野 久作

「文学時代」1931(昭和6)年10月、「探偵クラブ」1932(昭和7)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,100 字 · 23 页

青空文庫

若い、新米の主人に対する職工たちの侮辱と、冷罵とを予期させられつつ……。

しかし私の負けじ魂は、そんな不吉な予感のすべてを、腹の底の底の方へ押し隠してしまった。誇りかな気軽い態度で、バットを横啣えにしいしい、持場持場についている職工たちの白い呼吸を見まわした。

私の眼の前には巨大なフライトホイールが、黒い虹のようにピカピカと微笑している。

その向うに消え残っている昨夜からの暗黒の中には、大小の歯車が幾個となく、無限の歯噛みをし合っている。

ピストンロッドは灰色の腕をニューと突き出したまま……。

水圧打鋲機は天井裏の暗がりを睨み上げたまま……。

スチームハムマーは片足を持ち上げたまま……。

……すべてが超自然の巨大な馬力と、物理原則が生む確信とを百パーセントに身構えて、私の命令一下を待つべく、飽くまでも静まりかえっている。

……シイ――イイ……という音がどこからともなく聞こえるのは、セーフチーバルブの唇を洩るスチームの音であろう……それとも私の耳の底の鳴る音か……。

私の背筋を或る力が伝わった。右手が自ら高く揚った。

職工長がうなずいて去った。

……極めて徐々に……徐々に……工場内に重なり合った一切の機械が眼醒めはじめる。