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かいむ
怪夢
夢野 久作
「文学時代」1931(昭和6)年10月、「探偵クラブ」1932(昭和7)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,100 字 · 23 页
君は赴任匆々だから知るまいが、アイツは今までに二度も搭乗者が空中で行方不明になったんだ。おまけに二度とも機体だけが、不思議に無疵のまま落ちていたという曰く付きのシロモノなんだ。発動機も機体もまだシッカリしているんだが、みんな乗るのを厭がるもんだから、天井裏にくっ付けておいたんだ……止せ止せ……」
そう云って忠告した司令官の言葉も、心配そうに見送った同僚の顔も、みるみるうちに旧世紀の出来事のように層雲の下に消え失せて行った。そうして間もなく私の頭の上には朝の清新な太陽に濡れ輝いている夏の大空が、青く青く涯てしもなく拡がって行った。
私は得意であった。
機体の全部に関する精確な検査能力と、天候に対する鋭敏な観察力と、あらゆる危険を突破した経験以外には、何者をも信用しない事にきめている私は、そうした司令官や同僚たちの、迷信じみた心配に対する単純な反感から、思い切ってこうした急角度の上げ舵を取ったのであった。……そんな事で戦争に行けるか……という気になって……。
だが……ソンナような反感も、ヒイヤリと流れかかる層雲の一角を突破して行くうちに、あとかたもなく消え失せて行った。