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かいきじんぞうとう

怪奇人造島

寺島 柾史

「日本少年 付録」1937(昭和12)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,159 字 · 87 页

青空文庫

亡霊が、ラッコの皮を売ってどうするンだ」

「なるほど、そいつもそうだ」

水夫は、肯いたが、しかし、怪老人の姿をおもいうかべると、ぞっとした。果して亡霊だろうか、仮面の怪人物か。その謎の解けぬうちに、虎丸は、僕等とは、可成り距ってしまった。およそ、十数分も経ったが、火薬庫など爆発しやしない。潮流に乗って、悠々と、南々東を指して流れて往く。

僕も、水夫も、北太平洋の真ン中に、置去りにされてしまったのだ。しかも、浮袋一つに生命を托して、ひょうひょうと巨浪に飜弄されている。

もうすでに夕暮だ。赤い太陽が、西の空に沈もうとしている。海は、黄金を撒いたように輝いているが、それを眺めて楽しむどころではない。夕方でも、この寒さだから、夜になったら、一層寒さが加わるだろう。水が刃のように肌を刺し、僕等は、明日を待たず、凍死するにちがいない。

「ひでえことになったなア」

豹のような水夫も、さすがに心細くなったとみえ、今はもう、もぐらもちのように意気地がなく、浪に乗り、浪に沈みながら、悲鳴をあげている。

「ああ。ああ……」

そして、いつのまにか、僕との距離が遠ざかってしまった。