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かいきじんぞうとう

怪奇人造島

寺島 柾史

「日本少年 付録」1937(昭和12)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,159 字 · 87 页

青空文庫

「いいえ、感謝します」

「生かしてあげたのはわしだが、わしに感謝するより、科学の偉力そのものに感謝したがいい」

「あなたは、僕の胸を手術してくれたのですか」

「そうじゃ。おまえの、砕かれた心臓を、海へすて、あの大男の安南人の心臓を、移植してやったのさ。おまえの心臓は、あの大男から貰ったのじゃ」

「えッ! それじゃ、僕のこの心臓は、安南人の心臓なのですか」

「不満かな……。いや、不満とは云わさんぞ。犬の心臓と取替えたのではないからのう。ハ……」

「あなたは、死んだ人間を、勝手に生かすことが出来るのですね」

「そうじゃ。死んだ人間を生かすことが出来るが、生きた人間を殺しはせん。わしは、本国ドイツにいたころから、心臓移植の実験を、しばしば動物によって試みたものだが、人間を試みたのが、こんどが初めだったのさ」

「心臓移植は、あなたが初めて試みられたのですか」

「まず、そうじゃ。しかし、一九三三年に、ポロニーという学者が、一女性の腎臓を摘出して、新しい屍体の腎臓を移植して、毒死の危急を救ったことがある。いや、その翌年には、フイラトフという学者が、新しい屍体の眼球を摘出して、十一年間も失明していたある女に移植して成功したという事実もあるのじゃから、わしの心臓移植も、けっして珍しい手術ではあるまい」