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かいきじんぞうとう

怪奇人造島

寺島 柾史

「日本少年 付録」1937(昭和12)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,159 字 · 87 页

青空文庫

老博士は、とうとう、機関の修理を押付けられてしまった。

「炭水はあるかね」

「あります。この三ヶ月、一塊の石炭も使わなかったので□」

「機械油は?」

「それも十分です」

「ではひとつ、心臓の手入れをしてみようか」老博士は、やっと腰をあげた。陳君は、僕に向って、

「君は、また運転士だぜ。すぐ用意をしたまえよ。博士の修理が出来たら、僕は、すぐに機関を動かしてみせる。そのまに、石炭を汽罐に放り込んで置こうか」気の早い陳君は、逸早く昇降口から姿を消してしまった。

魔の海! 魔の海!

果して、数時間ののち、幽霊船虎丸は、運命の方船を、海洋に捨て、単独で動き出した。心臓部の機関が、軽快な響きを立てて回転し、太い煙突からは、海洋を圧するような黒煙が吐き出され、十五節の速度で、西に針路を執って航行しはじめた。僕は、得意満面である。西へ! 西へ! 西方には、祖国日本が横わっている。

僕は、運転室で、やたらに口笛を吹いた。

数ヶ月前、横浜埠頭で、ハマの船員たちに騙されて、密猟船虎丸のボーイとして乗船した僕が、今は、素人ながら、一等運転士の貫録をみせて、納り返っているなど、まったく夢のようだ。