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かいきじんぞうとう

怪奇人造島

寺島 柾史

「日本少年 付録」1937(昭和12)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,159 字 · 87 页

青空文庫

「諸君、このままだと、われわれの生命は、三日と保つまい。人間の肉体は、この急速度に対抗できても、心理的に疲れて、気が狂うか、もしくば心臓が破裂するだろう。まず、宿命とあきらめるのだね」生理学者の怪老人は、檣から張られた縄に取すがりながら、冷たい言葉を吐いた。

「機関をうんとかけて、渦巻の反対の方向へ舵機を廻したら、少しは、急速度な回転を緩めることは出来ませんか」陳君は、機関士らしいことを云った。

「それは、徒労さ。この物凄い渦巻に反抗してみろ。舵機はまたたくまに折れ、船も真二つになりかねないよ」物理学者らしい老博士の答えだ。

「幽霊船と運命を倶にしたくないなら、この船を脱れることだね」陳君は僕に囁いた。

「この魔の海を、どうして脱することが出来る?」

「さア、そいつは、僕の頭では考えられない。……あなたは、この幽霊船を脱することを、思案しているのではないのですか」陳君は、怪老人に訊ねた。生理学者は、歯のない口を開いて笑った。

「ハハハハハ。心臓の入替なら、いつでも御用に応ずるが、宿命の大渦巻を脱れる工夫は、わしの手腕力量ではないね」「ほんとうに、絶望ですか」