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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像』。同一底本的分册已合并为一书。收入:足の裏、穴、息を止める男、腐った蜉蝣、幻聴、孤独、舌打する、植物人間、蝕眠譜、自殺、鉄路、脳波操縦士、古傷、鱗粉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 页

青空文庫

その逞しさは、尠くとも都会の街路樹などとは比べものにならぬ水々しい樹肌を持ってい、而も思い思いの木の体臭を振撒いていた。

だが、川島のこの舌打ちの出る愉しい遭難は、二時間たらずで終りが見えたように思われた。

というのは、相当に急な崖を下りはじめると、木の間もれに、向うからも崖が迫っているのが見え、そして、その下の方に光った水が見えはじめたからである。若しそれが渓流ならば、それに従って下って行けば自然に人家のあるところに出られるのは、山道を歩く場合の殆んど常識といってもよかったからである。

川島は、深山幽谷のつもりで跋渉して来たところが、突然、お屋敷の裏庭に飛出してしまった時のような、むしろ飽気なさを覚えながら、下って行った。しかし、間もなくその光っているのは水ではあるが、流れではないのに気がついた。視界が広まるにつれて、その水の面も亦広がって行くのだ。

それは、こんなところに想像もしていなかった沼だった。そしてその沼の面は、まるで一面に苔蒸したように青みどろに覆われ、ねっとりとしたゼリーのように漣一つ立ててはいなかった。

川島は、水際まで下りる前に、朽ち倒れた松に腰をかけながら、その眼の下にひろがっている沼を見渡した。