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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
「われらのプリ・マドンナ、ジュリア!」
「殺してくれい、ジュリア!」
「百万ドルの女優!」
と、後はなにがなんだか、破れかえるような騒ぎで、合唱も器楽も揉み消されてしまった。実に空前の大喝采、空前の昂奮だった。――何がジュリアをこうも元気づけたか?
一番前の列にいた勇少年は、隣りの大辻の腕をひっぱって叫んだ。
「ああ、たいへんだ。あれ御覧よ。白い鴕鳥の扇から、真赤な血が飛び散っているよ」
「呀ッ。――これはいけない。ホウあのようにジュリアの衣裳の上から血がタラタラと滴れる!」
しかし他の者は、昂奮の渦巻の中に酔って、そんなことに気のつく者は一人もなかった。ワーッワーッと、まるで闘牛場のような騒ぎだった。――その嵐のような歓呼の絶頂に、わが歌姫赤星ジュリアはパッタリ舞台に倒れて虫の息となってしまった。間髪を入れず、舞台監督の機転で、大きな緞帳がスルスルと下りた。それがジュリアの最後の舞台だった。
青竜王の西一郎は、誰よりも真先に飛んで来て、ジュリアを抱き起した。
「ジュリアさん。どうしたんです。しっかりしなさい、ジュリアさん」
ジュリアはまるで意識がなかった。