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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

室内の風景はすっかり変っていた。客の多くは卓子の下に潜りこみ、ただすっかり酔っぱらって動けない連中が椅子の上にダラリとよりかかっていた。出口にはどこから現れたのか、武装した三十名ほどの警官隊がズラリと拳銃を擬して鉄壁のように並んでいる。

「頭を出すと危い!」

警官が注意した。

「あッはッはッはッ」

思いがけない高らかな哄笑が、円柱の影から聞えた。

素破! 雁金検事も大江山課長も、卓子を小楯にとって、無気味な哄笑のする方を注視した。

正面の太い円柱の陰から、蝙蝠のようにヒラリと空虚な舞台へ飛び出したものがあった。皮革で作ったような、黄色い奇妙な服を着た痩せこけた男だった。グッと出口の警官隊を睨みつけたその顔の醜怪さは、なにに喩えようもなかった。左半面には物凄い蟹の形の大痣がアリアリと認められた。ああ、遂に痣蟹が現れたのだ!

意外な犠牲

待ちに待たれていた大胆不敵な挑戦状の主は、とうとう皆の前に姿を現わしたのだった。怪賊痣蟹は二た目と見られない醜悪な面をわざと隠そうともせず、キッと武装警官隊の方を睨みつけた。

武装隊を指揮しているのは金剛部長だったが、ヌックと立って部下に号令した。