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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
「あの怪物がすこしでも動いたら、撃ち殺してしまえッ」
痣蟹はそれを聴くと、薄い唇をギュッと曲げて冷笑した。そして突然、背後に隠しもった彼の手慣れた武器をとりだした。それは恐るべき軽機関銃だった。彼が和蘭にいたとき、そこの秘密武器工場に注文して特に作らせたという精巧なものだった。――その機関銃の銃口が、警官たちの胸元を覘った。
「急ぎ撃てッ」
武装隊長は咄嗟に射撃号令をかけた。
ドドーン。ドドーン。
カタ、カタ、カタ、カタ。
どっちが先へ撃ちだしたのか分らなかった。忽ち室内の電灯はサッと消えて、暗黒となった。阿鼻叫喚の声、器物の壊れる音――その中に嵐のように荒れ狂う銃声があった。正面と出口とに相対峙して、パッパッパッと真紅な焔が物凄く閃いた。猛烈な射撃戦が始まったのだ。
警官隊は銃丸を浴びながら、ひるまず屈せず、勇敢に闘った。前方に火竜が火を噴いているような真赤な火の塊の陰に痣蟹がいる筈だった。それを目標に、拳銃の弾丸の続くかぎり覘いうった。ときどき警官たちは胸のあたりを丸太ン棒で擲りつけられたように感じた。それは防弾衣に痣蟹の放った銃丸が命中したときのことだった。