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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

防弾チョッキがなかったら、彼等はとうの昔に、全身蜂の巣のように穴が明いてしまったであろう。

だが軽機関銃の偉力は素晴らしかった。物凄い速さで飛びだしてくる銃丸は、大部分防弾衣で防ぎとめられはしたものの、だんだんに防弾鋼の当っていない肘を掠めたり手首に流れ当ったりして、さすがの警官隊もすこしひるみ始めた。卓子の陰から、眼ばかり出してこの猛烈な暗黒中の射撃戦を凝視していた雁金検事や大江山捜査課長などの首脳部一行は、早くも味方の旗色の悪いのを見てとった。

「大江山君、この儘じゃあ危いぞ。警官隊に突撃しろと号令してはどうだ」

「突撃したいところですが、駄目です。卓子だの椅子だの人間だのが転がっていて、邪魔をしているから突撃できません」

「でもこのままでは……」と検事は悲痛な言葉をのんだ。

と、そのときだった。誰か、検事の腕をひっぱる者があった。

「雁金さん、雁金さん――」

「おう、誰だッ」

「落付いて下さいよ、僕です。分りませんか」

「ナニ……そういう声は」

と雁金検事は相手の男の腕をグイと握ってひきよせて、低声で囁いた。

「――青竜王だナ」

青竜王! それはかねて雁金検事の親友として名の高い覆面探偵青竜王だったのである。