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うらみなきさつじん
恨なき殺人
宮島 資夫
「新日本」1917(大正6)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 页
ただ、小高い畑の上に建っているだけに、向うの山に月の出た夜などは、山村らしい眺めがあった。
二人が帰って来た時は、石山は湯に入っていた。池田は縁側で草鞋を脱ぐとごろりと寝転んで空を仰いで、湯のあくのを待っていた。
西の空は赤くなって、黒くなった山影との色彩がクッキリと分れていた。畑の向うの崖下を流れる川面から立つ靄が、川向いの山裾をうっすらと廻っていた。
池田は包みを縁に投り出したまま、前の広場をブラブラ歩きながら、夕やけの空を仰いでいた。
石山が湯から上って来ると、沼田は、
「ヤ、ただいま」と挨拶をしたが、池田は黙って湯に入ってしまった。沼田も直ぐに後から来た。
二人が湯から上るころ、大谷や阿部が帰って来た。一人者の事務員だけ事務所に泊ることになっていたのであった。
湯から上ると、池田は縁側に寝ころんでいた。石山は黙って現場の報告書を見ていたが、何時ものように次の間には出て来なかった。石山は毎日定って晩酌をやった。みんなの食事が終ったころに、丁度その酔いの廻りはじめるのも毎日同じようであった。食い散らした膳を前においたまま、左の手に報告書を持って、酔ってドロンとした眼でちょいちょい見ながら、