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うらみなきさつじん

恨なき殺人

宮島 資夫

「新日本」1917(大正6)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 页

青空文庫

翌日の午後であった。商人風の男や、髯を生やした男の四五人連れが、村境の峰の方から見張所へやって来た。

彼等はみんな、白い股引に脚袢草鞋をつけていたが、焦げるような日に照りつけられて、汗をダラダラ垂らしていた。

見張りの中へは髯を生やした男が一人入って来た。残ったものは、清水で汗を洗ったり木蔭で扇子を動かして休んでいた。池田は最初この山を見に来た鉱山師かと思っていた。が、髯を生やした男が、「一寸ごめん下さい」と言って出した名刺をみると、茨城県巡査という肩書があった。

「私は孫根の駐在所に居るものですが」と挨拶をしてから、

「実は今日、一寸取調べたいことがあって来たのですが、坑夫はみんなおりますかしら」と叮嚀に訊ねた。外に残ったものは、見張りの戸口に立って、ジロジロ四辺を見廻わしていた。

「取調べって、何のことですか」と池田が訊ねると、

「塩子の殺人事件に就てなんですが」と言って、まだ立っているので、

「まあお掛けなさい」と椅子をすすめてから、

「どうも、この山の坑夫は殺したような様子はありませんが」と言った。

「いや、それでも一寸、その調べたいことがあるのですが――坑夫はみんなおりますかしら」