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おんし
恩師
佐々木 邦
「現代」1926(大正15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,714 字 · 14 页
自分の為めに友達の興を殺ぎたくなかったのである。
「こゝへ来てチョコレートを買って帰らないと叱られるからね」
と態どやされて家へ向った。浜口君は武骨もので、私が清子さんのことを言い出すと、腕力に訴える外に能がない。
「何うでございましたの?」
と清子さんが出迎えてくれた。
「美事失敗して来ましたよ」
「御冗談でしょう? あら、お顔色が悪いわ」
「悪いかも知れません。矢っ張り運のない人間は違います。首を洗って仇のところへ持って行くような愚を演じました」
と私は一部始終を物語った。
翌朝学校へ行って掲示場へ来かゝると事務員が踏み台に乗って何か貼り出すところだった。新口なら申込もうと思って待っていると、不二商事という字が目についた。
不二商事に確定の諸君左の如し
とあって、私と浜口君と他三名が採用されていた。
「おや!」
と私は覚えず声を出した。間もなく浜口君もやって来て、
「宜かったなあ」
と喜んだ。
「僕のは全く意外だよ」
と私は狐につまゝれたような心持だった。
「矢っ張り分っていたんだよ。ナカ/\話せらあ。何うも然うだろうと思った」
「殊に二人一緒は有難い」
「祝盃を挙げる価値がある」