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おんし
恩師
佐々木 邦
「現代」1926(大正15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,714 字 · 14 页
と早速庶務課へ訊きに行った。すると係員がノコ/\やって来て、「諸君」という字を「もの」と訂正した。
「乃公は何も掲示の揚げ足を取りに行ったんじゃない」
と杉浦君は苦笑いをしていた。尤もこんな景気の悪いのばかりはない。
「おごれよ/\」
と皆に取り巻かれて、
「まあ/\待ってくれ。羽織の紐が取れたじゃないか?」
なぞと悦に入っているものもある。
一週間ばかりすると、
不二商事会社志望の諸君は二月二十一日午前九時までに数寄屋橋ビルデング四階東洋興業株式会社に出頭して会見の事
という掲示が出た。私はその日下宿へ帰ると直ぐに意を決して清子さんに打ち明けた。下宿といっても商売屋でない。又素人屋と呼ぶのも失礼な心持がする。もと従兄が世話になっていた家で、主人公は従兄と一緒に矢張り同じ大学を卒業して目下満鉄に勤めている。お母さんと妹の清子さんと女中の三人暮らしで男切れがないから、私は寧ろ所望されて留守居役を引き受けているのである。
この辺から話が少し甘くなるけれども辛抱して戴く。実は浜口君丈けに相談して郷里へは未だ言ってないが、私は清子さんを貰いたいのである。清子さんも私のところへ来たいのである。