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よろこばしきちしき

悦しき知識

深瀬 基寛

――停年講義(昭和三十三年九月十六日)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,972 字 · 33 页

青空文庫

あれがつまりロマンティシズムの、つまりキーツとかシェリとかワーズワスの時代の詩的活動の中心が、この産業革命というものに対する reaction です。非常な反逆。これがつまりイギリスのロマンティシズムというものの根本なんです。彼ら詩人にとってはですね、この煙突や鉄道や、こういう我々の日常卑近な生活を安易にするための、知識あるいはそれの応用たる科学工業、こういうもののために日々にイギリスの田園が荒らされて行って、詩人の呼吸する余地がなくなった。これに対する反逆なんでありますが、現代では、ま、産業革命に対する詩人の反逆、これは依然としてやはり詩人の課題だと思うんです。それはですね、我々のいわゆる進歩思想というものによって、生活の改善を目標にしている科学というものが、工業化の道をいつまでも歩みつづける限りは、詩人はどうしてもそういう世界に住みきれないんです。だからこれに対する何※かの詩人的認識を自らの詩の中で発表せざるをえない。だから、産業革命というものの課題は、ロマンティシズムで終っているとは思いませんが、その他に詩人が相手としなければならない科学の新しい局面が続々として現われて来た訳なんであります。