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あくまのでし
悪魔の弟子
浜尾 四郎
「新青年」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,202 字 · 51 页
そうして××女学校の生徒だったのです。私が彼女をはじめて見たのは上野の音楽学校の講堂ででした。あなたはおぼえて居られるでしょう。あの当時、上野に毎土曜日に開かれた音楽会が、東京に於ける殆ど唯一の権威ある音楽会でした。尤も、この他に或る有名な大名華族がパトロンとなってやって居た音楽会があった筈ですが、貴族に極端の反感をもって居たあなたは、私に一回もそれを紹介してくれた事はありません。
すえ子も私もあの土曜演奏会の忠実な聴衆でした。皆勤者だったわけです。私が如何にして彼女を知ったかということを今更くだくだしく云うことはやめましょう。其の秋から、かつてはあなたと私との愛を語りあった上野の杜は、今度は私とすえ子の愛を語るところとなったのでした。はじめて異性を愛することを知った私は凡てを捧げて彼女を愛しました。彼女も亦、私に少からぬ好意をもっていたらしかったのです。
若し此の恋が幸福に進んで行ったならば、或いは私はあなたから受けたあの恐ろしい毒蛇の毒を、消し得たかも知れません、あなたが全然知ることの出来ない女性の美しさ、尊さを知っている私には、すえ子はたしかに救いの神だったに違いありません。