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あくまのせいだん

悪魔の聖壇

平林 初之輔

「令女界 第六巻第一号」宝文館、1927(昭和2)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,931 字 · 10 页

青空文庫

金を借りようにも、身を寄せようにも、私にはそんなことを言い出すことのできる知人は一人もありませんでした。職業紹介所へは、今朝で四十六日通いつづけましたが、いつもいつもきわどいところで話がだめになってしまうのです。私はもうつくづく悲観してしまいました。自分の能力を疑いはじめてきました。世間の人は、みな例外なく、どんな人でも食ってだけはいるのに、私だけは明日から食うことすらできないのだと思うと、私はもうこの世の中に生活してゆく資格のない人間であるかのように考えられてくるのです。何か私には、私だけ気のつかない非常な欠陥があって、それは他人には一目でわかるので、そのために私はどこへいっても職にありつくことができないのだろうとすら私は考えました」

「とうとう恋しい民子にもあわずに、生存の戦いに敗れて自滅してゆくのだと思うともう世の中が急に真っ暗になったような気がするのです。私は今日の午過ぎ紹介所からの帰りにポケットの中で、二枚の白銅をにぎりしめながらあてもなく町を歩いていました。どこだったかよくおぼえてはいませんが、何でも忙しそうに人の往来するかなり賑やかな通りでした。