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あくまのせいだん
悪魔の聖壇
平林 初之輔
「令女界 第六巻第一号」宝文館、1927(昭和2)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,931 字 · 10 页
「私は弾丸の替わりを請求しました。お内儀さんはまた五発入りの盆を私の前においてくれました。また私は上の二つを射落としてしまいました。三度目はただの一発で成功しました。お内儀さんは敷島の箱を六つ私の前に置いて『すみませんがこれでお帰り下さい』と言うのです。私を地回りとにらんで逃げたのでしょう。私はその敷島を現金にかえてもらいました。三回分の料金が四十五銭、それを敷島六個の代金一円八銭から差し引いて六十三銭の金を受け取ると私は夢中で射的場を飛びだしました」
「私の精神状態はこれだけのことでがらりと一変しました。何だかひどい金持ちになったような、宇宙間のものが何もかも自分の意志のとおりになるような気がするのです。どこをどう歩いたものかおぼえませんが、いつのまにか私は四谷見付のところへ来ておりました。冷たい空っ風が吹いて、外套も着ていない私には寒さがしみじみと身にしみました。ふと橋の袂を見ると、親子らしい二人の女乞食が、地べたにつくばって、あわれっぽい声を出して通行人に施しを乞うているのです。私ははっと胸が迫りました。うれしいような、悲しいような、半ば夢中の精神状態で、私はづかづかと二人の乞食のそばへ走りよって、射的場で貰ってきた金を残らず、この親子づれの乞食にくれてやりました。