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かなしいごかい
悲しい誤解
豊島 与志雄
「女性改造」1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,139 字 · 23 页
「お怪我はなさらなかったの。あのひと、怖いのよ。」
みさ子が囁くように言ったのへ、私はまた卑屈な微笑を返した。
「一緒に飲みたかったんだ。あの男の分も飲んでやるぞ。」
虚勢を張るほど、ますます惨めになるばかりだ。中年の二人連れの客が、素知らぬ顔をして何か話しこんでいた。
私は腰がふらついて落着けなかった。さよ子が手をかしてくれて、横手の三畳の小室に私はあがった。
時間が途切れ途切れになったような、明滅する意識のなかで、私はさきほどの、自分の卑屈な微笑を自分で味っていた。今になってみると、もう惨めでもなんでもなく、却って安らかな和らぎさえも覚えるのである。憂鬱の底へと沈み沈み、落着くところへ落着いた感じだ。
それと共に、ふっと、堀田の卑屈な苦笑が浮んでくる。それが、私の微笑と重なり合ったりずれたりする。いずれにしても、二つは確かに違っていた。彼のは苦笑であった。私のは微笑であった。どこにその違いはあるのか。いくら詮索しても、智慧の輪解きのようなもので、手掛りはない。
下らないことだ。酔った頭脳の戯れだ。そう気がついて、寝そべってたのを、むっくり起き上ってみた。