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かなしめるこころ

悲しめる心

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,423 字 · 33 页

青空文庫

眼の裏が熱い様で居て涙もこぼれず動悸ばっかりがいつも何かに動かされた時と同じに速くハッキリと打って声はすっかりかすれた様になって仕舞った。

指の先まで鼓動が伝わって来る様で旅費のお札をくる時意くじなくブルブルとした。

今頃私が立つ様になろうとは思って居なかった祖母は私に下さるお金をくずしにすぐそばの郵便局まで行って下すった。

四角い電燈の様なもののささやかな灯影が淋しい露のじめじめした里道をゆれて行くのを見ると今更やるせない気持になって口の大きい気の強い小さい妹の姿を思いうかべながら大きな炉の火をのろのろとなおしたりして居た。

九時頃だったけれ共もう寝ていくら呼んでも駄目だったと祖母は行き損をして又元の形で帰っていらしった。

家の病人の悪いと云う事で旅先から帰ると云うのは私にとっては今度が初めてで口に云い表わせないワクワクした気持がそう云う事に経験のない私の心を目茶目茶にかき廻した。どうぞして気を鎮めたいものだと思って欲しくもない枝豆をポチポチ食べながら今度の病気の原因を話し合ったりした。不断から食の強い児で年や体のわりに大食した上に時々は見っともない様な内所事をして食べるので私が来る前頃胃拡張になって居た。