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かなしめるこころ
悲しめる心
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,423 字 · 33 页
胃から来た脳膜炎だろうと云うのが皆の一致した想像だった。
若し実際脳膜炎だとすればどうぞ死んで呉れる様にと私は願って居た。
自分の妹を死ぬ様になどと云うのはいかにも惨酷な様に聞えるけれ共たった一人の妹を愛する心は白痴の恥かしい姿を生きた屍にさらして悲しい目を見せるよりはとその死を願うのであった。
心はせかせかして足取りや姿は重く止めどなくあっちこっち歩き廻った、祖母もあんまりぞっとしない様な顔をしてだまって明るくない電気のまどろんだ様な光線をあびて眼をしばたたいて居た。
「兄弟達にも可愛がられないで不運な子って云うのよ。
腹立たしい様な調子でぶつぶつ祖母は小さい妹の待遇法について不平を云った。
「兄弟が多いからでしょう、仕方がありませんよねえ。今度病気がよくなったらこっちでお育てなさるといい。楽しみにもなるしするから。
「何! なおるもんで。
お前が行きつく頃にはもう死んでるだろう。
重いと云って来た妹の病気について善い予期ばかりを持って居たい私の心に祖母の言葉はズシーンズシーンと響いた。
「何にも死ぬときまった事っちゃあなし、
今っからそんな事――
やたらにムシャクシャして私はスタスタと床に入って仕舞った。