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わたしのちちとはは
惜しみなく愛は奪う
有島 武郎
有島武郎『惜しみなく愛は奪う』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私の父と母、二つの道、片信、広津氏に答う、小作人への告別、宣言一つ、想片。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,351 字 · 70 页
と言っていた。健康は小さい時分にはたいへん弱い子で、これで育つだろうかと心配されたそうだが、私が知ってからは強壮で、身体こそ小さかったが、精力の強い、仕事の能く続けてできる体格であった。仕事に表わす精力は、我々子供たちを驚かすことがしばしばあったくらいである。芸術に対しては特に没頭したものがなかったので、鑑識力も発達してはいなかったが、見当違いの批評などをする時でも、父その人でなければ言われないような表現や言葉使いをした。父は私たちが芸術に携わることは極端に嫌って、ことに軽文学は極端に排斥した。私たちは父の目を掠めてそれを味わわなければならなかったのを記憶する。
父の生い立ちは非常に不幸であった。父の父、すなわち私たちの祖父に当たる人は、薩摩の中の小藩の士で、島津家から見れば陪臣であったが、その小藩に起こったお家騒動に捲き込まれて、琉球のあるところへ遠島された。それが父の七歳の時ぐらいで、それから十五か十六ぐらいまでは祖父の薫育に人となった。したがって小さい時から孤独で(父はその上一人子であった)ひとりで立っていかなければならなかったのと、父その人があまり正直であるため、しばしば人の欺くところとなった苦い経験があるのとで、人に欺かれないために、人に対して寛容でない偏狭な所があった。