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わたしのちちとはは
惜しみなく愛は奪う
有島 武郎
有島武郎『惜しみなく愛は奪う』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私の父と母、二つの道、片信、広津氏に答う、小作人への告別、宣言一つ、想片。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,351 字 · 70 页
これは境遇と性質とから来ているので、晩年にはおいおい練れて、広い襟懐を示すようになった。ことにおもしろがったり喜んだりする時には、私たちが「父の笑い」と言っている、非常に無邪気な善良な笑い方をした。性質の純な所が、外面的の修養などが剥がれて現われたものである。
母の父は南部すなわち盛岡藩の江戸留守居役で、母は九州の血を持った人であった。その間に生まれた母であるから、国籍は北にあっても、南方の血が多かった。維新の際南部藩が朝敵にまわったため、母は十二、三から流離の苦を嘗めて、結婚前には東京でお針の賃仕事をしていたということである。こうして若い時から世の辛酸を嘗めつくしたためか、母の気性には濶達な方面とともに、人を呑んでかかるような鋭い所がある。人の妻となってからは、当時の女庭訓的な思想のために、在来の家庭的な、いわゆるハウスワイフというような型に入ろうと努め、また入りおおせた。しかし性質の根柢にある烈しいものが、間々現われた。若い時には極度に苦しんだり悲しんだりすると、往々卒倒して感覚を失うことがあった。その発作は劇しいもので、男が二、三人も懸られなければ取り扱われないほどであった。