轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おろかないちにち
愚かな一日
豊島 与志雄
「太陽」1920(大正9)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,045 字 · 29 页
それらのものに彼はいつのまにか見覚えが出来ていた。庭の片隅にある梅の枝と、日に当ってる雀であった。彼はそれにちっと眸を定めた。雀はいつまでたっても動かなかった。可愛いい小首を傾げたり翼を動かしたりすることを期待してる彼の眼は、殆んど自棄的な気長さを強いられた。凡てはただ事もない明るい静けさのみだった。梅の枝の影が障子の上を静に移ってゆくのが感じられるまでになっても、雀は身動きさえしなかった。それを見てるうちに彼は恐ろしく退屈になった。
彼はまた頭を枕につけて眼を閉じた。転地して来てからの二ヶ月間のことが頭に映じてきた。それがまた恐ろしく退屈なものであった。
彼は深い憂鬱と銷沈とに陥っていた。それはふとした気分の転機から、いつもよく陥ってゆく空虚な淵であった。夢の中で高い処から下へ落ちてゆくような気持ち、それに甘えながらもそれに息づまるような気持ち、そういう気持ちで彼は空虚な淵の中へ沈んでいった。何をするのも懶いがまたじっとしても居れなかった。底知れぬ寂莫の感が胸の奥からこみ上げて来た。眼を閉じるとあたりが薄暗い荒廃の気に鎖されそうな思いがした。彼は大きく眼を開いて、眸をぼんやり天井に向けていた。