轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あいのために

愛の為めに

甲賀 三郎

「探偵文藝 第2巻第4号」奎運社、1926(大正15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,919 字 · 24 页

青空文庫

何故ならもし私が見つかればきっと二人の仲を裂かれると思っていたから)、私達が偽名して今の所に住んでいるのが、ひょっと知れるのも恐かった。

私は三年前今の妻と恋に陥ちた。妻は当時あるカフェの女給をしていた。彼女はほんとうに真菰の中に咲く菖蒲だった。その顔があどけなく愛くるしいように、気質も優しくて、貞淑だった。けれども頑固な父は女給であると云う事だけで私達の結婚をどうしても許さなかった。父にして見れば早く妻に別れて、男手一つで育て上げた一人息子は掌中の珠より可惜しかった。その大事な息子の魂が、父の見解に従うと売女としか思えない女給風情に盗み去られると云う事は、耐らないことであったのだ。

或日とうとう最後の時が来た。私は父に袂別の辞を述べて家を出たのだ。それから人目を避ける為めに偽名をして、この路次の奥のささやかな家に世帯を持っているのだ。

それから三年越し私達は随分苦労した。私は妻とした上は女給をさせて置く事は出来なかったから、僅か許り持出した金を頼みに、内職をしたり、ホンの僅な給料で勤めたりして、細々と生計を立てて来た。それが、何と云う不幸だろう。