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つきもの

憑きもの

豊島 与志雄

「改造文芸」1949(昭和24)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,983 字 · 27 页

青空文庫

狐にばかされる第一歩だったかも知れない、と黒田は告白した。

東京都内でもそういうことがある。田舎にはもっと不可思議なことが多々ある。狐つきは固より、物の怪の崇りのこと、死霊や生霊のことなど、不可思議さには奥行きが知れない。それがつまり実験談の語るところであった。然しその不可思議さにも限界があって、憑く方のもの、崇る方のものは、実際には存在せず、憑かれる方のもの、崇られる方のもの、即ち人間の精神だけが、実際には存在するのであって、それはもはや精神病理の問題に過ぎないのである。それだけのことを一度承認しておいて、そして心霊研究の大家は、霊界の存在を主張した。

「霊の世界はあります。ただ、その霊界との通信が、普通の人には出来ないだけのことで、特殊な能力を持ってる人、霊能者には、それが出来ます。」

速記後の雑談には、お上さんや秋子もお酌しながら加わっていた。お上さんは尋ねた。

「霊の世界には、やはり、狐や狸みたいなものの霊も、あるのでございましょうか。」

「あります。いろいろなものの霊がありますよ。天狗の霊などは、霊能者にしばしば通信してくれます。」

それからまた怪談となった。